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IC-911DでのFT8運用におけるマイク端子入力レベルによる歪の影響 [ham]

FT8の送信実験の際に遭遇した不具合についてです。
WSJT-Xで発生させた低めの周波数のオーディオ出力をIC-911Dのマイク端子へ入れた場合、結構大きな歪が発生して高調波が出ると同時に送信出力まで下がってしまう事象が起きました。そこで、いくつか条件を変えて送信し、受信機の復調信号(オーディオ信号)を観察してみました。
詳細はhttps://jq1qnv.sakura.ne.jp/body/FT8_mic_level/ft8_mic_level.htmlをみてください。

下の図 はIC-911Dのマイク端子へ過大なレベルで入力、Fake It無しの状態で送信したものを別な受信機で受信したものです。

fig05_wsjt-x_disable_Fake_It_s.jpg

次の図は上の図の条件で、Fake It有りの設定のみ変更した場合の状態で送信したものです。
スプラッタが消えています。

fig06_wsjt-x_enable_Fake_It_s.jpg

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Raspberry Pi 3 による FT8 の運用 [ham]

1. FT8をやってみる
 少し前から流行っているデジタルモードのFT8ですが、私もようやく運用にこぎつけました。デジタルモードですのでPCに専用のアプリケーション(WSJT-X)をインストールすることになりますが、普段使っているデスクトップのPCではQtのバージョンが合わないことがわかり、どうしたものかと調べていたら、Raspberry Pi でWSJT-X を運用している諸先輩方がいらっしゃるようです。それで、ほったらかしになっていた Raspberry Pi 3 B+ が有ったのを思い出し、こっちの方が楽で面白そうだと思い、やってみました。機器の構成を以下に示します。

機器の構成.png

2. 機器の準備、運用
 FT8はWSJT-Xというソフトを操作することになるため、Raspberry Pi に WSJT-X をインストールするのですが、その前に準備が必要です。まず、変調/復調のデータはオーディオ信号なので、Raspberry Pi 3 で音声の入出力が扱えるようにしなければなりませんがRaspberry Pi 3には音声入力のためのハードウエアがありません。そこで今回はUSBオーディオ変換アダプタを使用しました。使用したアダプタは サンワサプライ(株)の MM-ADUSBTC1 で、これ自体はつなぐだけですぐ使えました。動作確認についてはhttps://ham-jq1qnv.blog.ss-blog.jp/2020-05-25-1を見てください。
 次に hamlib です。Raspberry Pi 3 からリグを操作するために hamlib とシリアルインターフェースが必要になりますが、これについてはhttps://ham-jq1qnv.blog.ss-blog.jp/2020-05-26-1を見てください。あと、FT8は時刻の精度が要求されますのでNTP等で時計の同期が取れるようにしておいてください。
 Raspberry Pi 3周りのハードウエアが準備できたら、最後にWSJT-X のインストールです。http://www.kk5jy.net/wsjtx-build/ に必要なライブラリのインストール方法など詳しく書かれていて、このページのとおりに操作したらインストールできました。
 WSJT-Xの設定や運用は webで諸先輩方が教えてくださっているので探してみてください。2020年6月23から7月11日までの運用実績は 144MHz 66QSO, 430MHz 25QSOでした。送信機は主にIC-911Dです。IC-7400でも交信していますが、後述の理由で2QSOに留まっています。

3. 周波数ドリフトの問題
 IC-911Dでしばらく運用した後、送信機を取り換えて IC-7400で運用してみたのですが周波数ドリフトが大きくてうまく行きませんでした。IC-7400でしばらくワッチして、いくつかCQを出している局が有ったので呼んでみました。しかし、相手から応答があるようなのですが、デコードしてくれません。ウォーターフォールを見てみると、どうも受信周波数がドリフトしているようなのでその様子を確認してみました。ダミーロードを取り付けた別な送信機(FT-817)でCWのトーンを連続送信し、その漏れ電波をIC-7400とつながっているWSJT-Xで受信、次にIC-7400からWSJT-XのTune機能を使って15秒送信、15秒受信を繰り返してWSJT-Xのウォーターフォールをみたところ、 15秒間の受信中に40Hz近いドリフトがあることが判りました(下図)。FT8の帯域が50Hzなので、さすがに短時間にこれだけ動くとデコードできないのでしょう。

IC-7400_144MHz_Screenshot from 2020-07-05 14-06-40_1.png

IC-911Dでも同様の実験をしましたが、送信・受信を繰り返してもほとんどドリフトは無く下図の通り良好に動作しています。

IC-911D_144MHz_Screenshot from 2020-07-05 09-59-56_1.png

(IC-7400はリグの電源を入れて2,3時間経ってもこんな調子です。まぁ、こんなにひどいのは144MHzだけで、50MHzも多少ドリフトはありましたが、程度は小さく、 HFではさらに小さいドリフトだったので、HFなら、まぁ、いけるんじゃないかと思います。)

4. FT8でのALC
 以前、PSK31の運用に際してALCとIMDの関係を調べたことがあり、送信機への制限を(少しでも)超えた入力はALCの影響で歪んだ出力になると認識していましたのでFT8でも同じだろうなと思っていました。しかし、調べてみると、FT8は変調により周波数が変化するとき以外は基本シングルトーンで相互変調するための周波数成分が無いためALCについてはPSK31ほど神経質になる必要は無さそうです。デジタルオシロでRaspberry Pi 3 からのFT8のオーディオ信号を観察してみましたが、一定振幅のシングルトーンでした。ただし、過大入力で問題が出ない無い訳ではなく、マイクからの音声信号を増幅する回路に非線形があると Raspberry Pi 3 からのシングルトーンに高調波が混ざってきますので、低いトーン周波数の場合はバンド内に妨害が出ます。また、この問題を軽減するためにWSJT-X では"Fake It"という機能があります。

5. MIC入力かACC入力か・・・答えは"Fake It"でした
 WSJT-X のTune時出力(500 Hzのトーン)をIC-911Dのマイク端子につないで実験したところ、結構ひどい高調波が出ていることがわかました。入力をACC端子に変えたら高調波はかなり低くなったのでマイク入力の低周波増幅器が悪さをしているようです。次にWSJT-Xの設定を変えて Fake It を有効にしたらMIC入力であっても高調波はかなり低くなりました。実験の結果を下表に示します。

送信機への入力の違い.png

6.その他
 U/Vの空いているバンドだからできるのかもしれないのですが、CQ局を呼んだ後に別な局から呼ばれることが結構ありますね。CWやフォーンだとCQ局への妨害になるのでCQ局を呼んだ局が別な局から呼ばれることは稀ですが、FT8だとスコープ内のCQ局とは別な周波数で呼べば妨害にならないので躊躇なく呼ぶことができます。また、呼ばれた方もそれが受信履歴で色分けされた文字として表示されるので、呼ばれたことがすぐにわかりますし、気づくのが遅れても1分程度であれば応答できるというこれまでとは違った形の交信ができますので意外と効率は良いと思います。
 やっと参入したFT8ですが、現時点まだHFでの運用ができていないので自宅のHF環境を整えつつ運用に漕ぎ着けたいと思います。

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